宝珠のおたより

子育てで大切にしたい、10のこと

こんにちは、宝珠保育園の園長の倉松です。正直、「園長」と呼ばれるのも、園長と名乗るのも不慣れではありますが、園を代表して、私たちが子どもと向き合う際に大切にしていることや、宝珠保育園の日々の取り組みなどを皆さんに知っていただけるよう、発信していきたいと考えています。

まず、第一回目は「子育てで大切にしたい、10のこと」です。

これからお伝えすることは、私たちが教育の中で大切にしていることでもあり、できることなら、ご家庭の中でも気にかけていただきたいことです。

もちろん無理にとは言いません。でも少しだけ取り入れていただくことで、お子様のより良い成長につながっていくものと思いますので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

-子育てで大切したい、10のこと-
1.感謝と思いやりの心を育てる
2.挨拶をする
3.返事をする
4.聞く力を身につける
5.子どもの興味・関心を見逃さない
6.Why/How/Ifをうまく使う
7.叱るときは具体的にわかりやすく
8.本物を体験する
9.創造力を豊かにする
10.アートに触れる


1. 感謝と思いやりの心を育てる

これは、先代からずっと継承されてきた、一番大切にしている園の理念です。自分の命も、他者や草木や動物の命も、全ての命はかけがえのないものです。それを理解し、感謝することで、思いやる気持ちを持ってほしいと、全ての職員、園児に伝えています。

成長過程にいる園児たちは、言葉で教えられるより体験したほうがよく理解してくれます。だからこそ宝珠保育園では、草花や農作物、メダカなどの生き物を育てる活動をおこなっているのです。手間と時間をかけて一生懸命育てた先で、花が咲いたり、実がなったり、成長したりするのを目の当たりにする中で、命あることの素晴らしさや喜びを感じることができます。また、大切に育てたにも関わらず、枯れてしまったり死んでしまったりすることもありますが、そこからは、命はかけがえのないもので、それを失ってしまうことがどんなに悲しいかを身をもって理解することができるのです。
ある日、とある保護者の方が私に「昨日、娘に怒られてしまって…」と照れくさそうに言うのです。どうしたのかと尋ねると「わたしのお茶碗にお米が残っていたのを見て、“大切な命を無駄にするんじゃない”って言うんですよ」と。これはとても微笑ましくもあり、私にとっては、子どもたちに「命の大切さ」がちゃんと伝わっていることを実感した、とても嬉しいお話でもありました。

命の大切さを実感する中でこそ、自分を大切に育ててくれたご家庭への感謝や、お友だちを思いやる心が育まれていきます。ぜひご家庭でも命に感謝する、という意識で過ごしていただけると有り難いです。

2. 挨拶をする

「挨拶をする」とは基本的なことですが、とても大切なことです。挨拶は、言語は変わっても、世界共通のコミュニケーション習慣です。大人になっても、挨拶をしない、挨拶の仕方が悪いなどの挨拶の仕方1つでで、相手を傷つけ、不快にしたり、自分が傷つくことすらある。だからこそ、子どものうちから「気持ちの良い挨拶」を身につけることが大切です。

私たちは園児たちに「挨拶をしなさい!」などとは言いません。まずは自分たちが、園児たちや周りの人たちに、笑顔で挨拶をすることを心がけています。子どもたちも笑顔で挨拶をされると嬉しいものです。すると子どもたちも、自分がされて嬉しい挨拶を真似してみるようになります。そうするとまた相手が嬉しい笑顔を見せてくれる、といった好循環が起こるのです。
難しい準備はいりません。どうかご家庭でも、毎日笑顔で気持ちの良い挨拶を心がけてみてください。子どもに対してだけでなく、大人同士でも。子どもは大人の行動をよく見ていますから。そうすると、子どもだけでなく、大人も気持ちよく1日を過ごせると思いますよ。

3. 返事をする

これも挨拶と同じ、世界共通のコミュニケーションです。これを読んでいる大人の皆さんにも経験はありませんか?何かを問いかけて返事がなくて「無視されたのでは?」と傷ついたこと。曖昧な返事をされて「本当に分かってくれたのかな?」と不安になったこと。人と人とが付き合っていく中で、自分が理解していることを相手にも理解してもらうための「意思疎通」の手段としても、返事は必要不可欠です。宝珠保育園では、園児たちにお話したことを理解できているかどうか、確認することを大切にしています。そのため、担任は2人以上を推奨し、園児たちの理解度に耳を傾けながら、話をしていきます。理解するまでに時間がかかっても良いのです。ただ、理解ができたなら「返事をする」ことで、理解ができたことを「伝えてくれること」が重要なのです。これから、小学校・中学校・高校と学びを進めていく中でも、それは大切なことになってきますから、ぜひ周りの大人たちも気にして過ごしてみてください。

4. 聞く力を身につける

物事を知る、理解するためは「聞く」ということが大切です。相手の話に集中し、理解を深めることは、学力を身につけるためにも必要です。園児たちには【聞く→分かる→できるようになる→楽しい→もっと知りたい→だから聞く】という好循環を体験してもらいたいと思っています。

宝珠保育園で導入している「和太鼓」は、この好循環を体験するのに最適です。和太鼓が上手になるには、先生の話をしっかり聞き、理解をした上で、演奏中は周りの音に耳を傾け、リズムを取っていく必要があります。しかも、ご存知の通りバチは左右1本ずつ。両手のことを考えながら、タイミングや力の強さ、叩く場所など、全部のバランスがとれて、初めて「演奏」になります。面白いことに、和太鼓が上手な子には共通点があります。それは「先生の話をよく聞ける」ということ。どうやったら上手に叩けるかの話を「よく聞く」ことが、上達には必要不可欠なのです。
最初は音が出るだけで満足だった子が、どんどん周りの人に合わせられるようになり、息を合わせて演奏できるようになると、本人もすごく嬉しそうです。お話をちゃんと聞いて、上手になったら、嬉しい!楽しい!という好循環が学びには大切だと考えています。

5. 子どもの興味・関心を見逃さない

子どもは大人とは違い、子ども独特の感性を持っています。そして、大人が思いもしないところに興味を抱いたり、夢中になったりするものです。それぞれの子どもが何に関心を持っているのか、そしてその興味のあることを尊重し、伸ばしてあげたいと考えています。
だからこそ宝珠保育園では、園の中だけではなく、外での体験にも力を入れています。
絵を描く、畑で作物を育てる、体操をする、虫取りをする、色々な体験の中に、それぞれの園児たちの興味の種があります。それを見つけて、育ててあげてほしいです。毎日お仕事にも忙しい親御さんだけの力で、色々な体験をさせるのは、なかなか難しいことだと思います。だからこそ、私たちがお預かりする時間の中で体験してもらいたいと思います。

子どもたちは、自分の好きなことについては「よく話して」くれるものです。おうちでも、そんなお子さんの話に耳を傾けていただき、子どもの好きなことへ、チャレンジさせてあげていただければと思います。

6. Why/How/Ifをうまく使う

宝珠保育園では、子どもとの会話の中で「Why(それはなぜ?どうして?)」「How(どうやるの?)」「If(もし~だったらどうだった?)」と使うことを心がけています。
子どもが話してくれたことに対して、「そうだよね」「そうなんだ」と会話を終わらせてしまうのではなく、オープンクエスチョンを投げかけることによって、子どもは自分の頭で考えるようになります。例えば「給食おいしかった!」→「何がおいしかったの?」→「うんとね、好きな○○が入ってたから!」→「○○のどんなところが好き?」…という流れです。また、何か失敗をしてしまった時は「もしこうだったら、どうなっていただろうね?」と考えてもらいます。


こうやって「自分の頭で考える」ことは、大人になってからも大切です。社会は自分の頭で考えられる人材を求めているのです。でも、忙しい義務教育の過程では、自分の頭で考える機会が減ってしまうのが現実。だからこそこの保育期間に、少しでも脳を活性化して欲しいと思います。親御さんは、それほど難しく考えなくても大丈夫です。ただ、ご家庭でのお子様との会話の際には、少しだけ意識して、会話のキャッチボールを楽しんでみてください。お子様の新たな一面や考え方を知ることができて、それも楽しいと思います。

7. 叱るときは具体的にわかりやすく

叱る際に一番してはいけないことは人格否定です。バカだとか駄目な子だとか、そんな言葉は使ってはいけません。やってはいけないことをしてしまったら、どうしてそれが良くないことだったのかを説明してあげてください。

また、親御さんに悪気はなくても「○○くんは、これできないもんね」とか「○○ちゃんはこれ苦手だからね」なんてことも、言わないであげてください。物事の初期の段階での得手不得手は誰にでもあります。でも、これからできるようになったり、面白さを見出したりできる年齢です。人格にコンプレックスを持ってしまった子どもは、日常生活でも消極的になってしまい、それが成長の妨げになります。わたしは何かにチャレンジしはじめた子どもに対して、「絶対できるようになるよ!」という言い方をします。できるという可能性をちゃんと伝えてあげるのです。

謙遜して「うちの子は○○だからだめよ」なんて話をしてしまう親御さんもいます。それは大人同士の何気ない会話だとは思うのですが、子どもは大人の話をよく聞いているものです。
どうか、ご家庭や日常のちょっとした会話の中でも、子どもの可能性信じて、言葉と態度でも肯定してあげていただきたいです。それが必ず、将来の子どものためになると信じています。

8. 本物を体験する

何でもある便利な世の中になりました。手の中のスマートフォンを使えば、あらゆる情報にアクセスできるようになり、子どもの周りには情報が溢れています。しかしながら、その情報は、必ずしも質の高いものばかりではありません。質の悪いものまで全てが入り混じった、玉石混合の世の中です。

わたしは、宝珠保育園の卒園生たちには、世界で輝く人になってほしいと思っています。0才~6才までは、人格形成に大切な時期。だからこそ、この時期に「本物」に触れてもらうことにこだわっています。

例えば、和太鼓。宝珠保育園で園児たちが演奏している和太鼓は、石川県の浅野太鼓さんというところで作られた、プロが使っているものを同じものです。(プロの創作和太鼓集団「鬼太鼓座」(おんでこざ)も使用しているほど)。また、農作業も実際の畑や田んぼでおこないます。ちょっとした野菜を育てる経験はプランターでもできます。でもそれは疑似体験であり、本物ではない。
本物の大きさ、力強さ、迫力に触れながら、子どもたちが自分で考え、手を使い、体を動かして、五感で体感することがより良い成長へとつながっていくのです。

これらをご家庭で実践するのは、難しいかもしれません。ただ、もしご家庭で実践できるとしたら、絵本を読ませてあげてください。今の時代は、童話だけではなく、社会や環境について考える絵本がたくさんあります。園内にもたくさんの絵本が揃えてありますし、おすすめを聞いていただければお伝えします。ぜひお子さんと一緒に読んで、世の中に関心を向けるきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

9. 想像力を豊かにする

私が思う「日本人にいま一番必要なこと」は「妄想力」だと思っています。正確には「もっとこうすれば良くなる、と妄想して、実際に行動に移す力」です。
将来に渡って、自分で考えずに周りに流されてばかりいると、平均的なところから抜け出せなくなってしまうからです。そのためには、小さなうちから「こうすればもっと良いのでは?」「これをこうしてみたらどうだろう?」という想像と実践をしてみてほしいのです。


そのような体験をしてもらうために、新型コロナの流行前はよく園外保育をやっていました。ある時は、なかがわ水遊園の「鮎のつかみ取り」へ行き、みんなで鮎を追いかけ回す。鮎は表面がヌルヌルしていますから、ただ両手で掴むだけでは、つるつると手をすり抜けてしまいます。大人だって難しい。じゃあ、そのヌルヌルの魚を、どうやったら手から逃さずに捕まえられるのかを、考えるわけです。またある時は、ザリガニ釣りへ。ところがザリガニたちは、定番の餌のスルメには釣られ慣れていて、全然食いつかない。そこで子どもたちは、では何の餌なら釣れるのかを考えて試します。考えて、試して、失敗したり成功したりする中で、学んでいくのです。

園外保育に限らず、園内でも考える機会を設けています。各クラスには、年代に合わせた色々なおもちゃを揃えています。園の理想と理念を同じくする「ジャクエツ」さんというメーカーのものが多いのですが、ブロック1つ取っても、組合せ方で色んなカタチが作れます。自由度が高いのです。ですから、作る子が違えば、全然違うものができます。「今度はどんなものを作ろうか」と、想像を膨らませながら、考えて手を動かす習慣を身に付けてもらうことを目指しています。

10. アートに触れる

現代の調査では、芸術やアートの授業や勉強をしている生徒ほど、創造力が高いことが分かっています。また、アート鑑賞で右脳を刺激されることが、普段とは違う発想のきっかけにもつながると言われています。


実のところ、私自身かつてはアートには全く関心のない人間でした。でも仕事をする中で、尊敬できるリーダーや経営者に会う機会も増える中で気がついたのは、皆さん共通して、アートや芸術にも関心が高く、子どものころから触れる機会を得ていた方も多かったのです。


子どもの頃からアートに触れることで、「この芸術家がスゴイ」とか「この絵が高い」とかを見極めて欲しいわけではなくて、見ることを「考えるきっかけ」にして欲しいのです。アートには、ぱっ見で何の絵なのか(何の彫刻なのか)分からないものも多いと思います。ただそれをみて「ふーん」と終わらせるのではなく、「これは何を表現したのだろう」と考えてみること、または隣の人と意見を交わし合うことで、同じものに対して、別の見方をする人がいることを知り、様々な感性に触れ合うことが大切だと考えています。


美術館や博物館に足を運ばなくても構いません。普段の生活の中にある、インテリアや食器などにも、たくさんのアートが施されています。日常の中で「ちょっと気にして見る」だけで、子どの成長にはプラスに働くはずです。
宝珠保育園でも、この「対話型アート鑑賞」を取り入れるべく、講師の方とご相談をしています。ぜひ楽しみにしていただければと思います。

いかがでしたでしょうか?
実は日常のちょっとした心がけでも、子どもの成長に役立つことも多いことがおわかりいただけたかと思います。ですが、子どもは1人1人違った人間で、成長の速度だって違います。理想通りにできないことが多々あると思います。そんなときはどうか、無理をなさらず私たちに相談して下さい。
お子さんのより良い成長のために、一緒に頑張っていきたいと思っていますので、担任でも私倉松でも、気軽にお声がけいただければ幸いです。