宝珠のおたより

新型コロナウイルスによる保育園への影響と取り組み

こんにちは、宝珠保育園の園長の倉松です。
いつも『宝珠のおたより』をご覧になってくださる皆さま、本当にありがとうございます。

この『宝珠のおたより』はコロナ禍でスタートしました。
未知のウイルスの爆発的な流行に、私たち大人も何が正解か悩むことも多かったと思います。
お子様を預ける保護者の方々も、ご不安やお悩みもなども多かったことでしょう。

すぐに収束するかと思われたウイルスも、初めての緊急事態宣言(2020年4月7日)から2年以上の月日が経過した現在も、収束したとは言えない状況です。
おそらく、これからもコロナと付き合っていかねばならない状況が続くことが予想されます。

だからこそ今回は、そんな「コロナウイルス」の流行下において、保育園と子どもたちに、どのような影響があったのか、またそれについてどんな対策を実行したのかをお伝えしたいと思います。

先にお伝えしますと、ネガティブな話ばかりではありません。ポジティブな変化もありました。 この機会に知っていただけましたら幸いです。

初めての緊急事態宣言。「教育が止まってしまう」という恐怖

マスク

2020年4月。新型コロナウイルスがまん延していく中で、緊急事態宣言が発令されました。
テレビ等メディアが発信する「これはとんでもないウイルスだ」というメッセージに、多くの人が恐怖を感じたことと思います。
宝珠保育園は休園にはなりませんでしたが、先生たちは各教室や備品の消毒に追われる日々を過ごしていました。
それに伴い、本来4月からスタートするはずだった各月齢に合わせた保育・教育計画を予定通りに進めることは困難になり、「教育が止まったような雰囲気」に焦りを感じました。

不安な日々が続く中、6月ごろになるとグンと気温が上がり、今度は熱中症の心配も高まります。
子どもは大人よりも熱中症になりやすいと言われていますから、外に出る際は、子どもたちのマスクは外してもらうことにしました。

すると、今度は見ず知らずの方から「なぜマスクをさせないのか!」と怒鳴り込まれる始末。

正義感やコロナへの不安が高じての行動だったとは思いますが、私たちも、コロナウイルスに限らず、様々な角度から子どもたちの安全性を熟慮しての判断でもあったので、ご理解いただくことの難しさや悲しさ、恐怖を感じた出来事でした。 それと同時に、私は「このままでは何の教育もできなくなってしまう」という恐れを感じたのです。

できないことを嘆き続けるのではなく、できる方法を考えよう

宝珠保育園のカリキュラムには「和太鼓」があります。
使用している和太鼓は、プロも使っている本物の和太鼓。しかしこの和太鼓は、声を出しながら覚えていくものなのです。
しかし「室内で、みんなで集まって、声を出して練習する」という和太鼓の授業は、感染防止の観点では推奨されません。

だったら、やめるしかないのでしょうか。
コロナだから仕方ないと、色んなことをやめて、子どもたちの教育の機会が失われていくのが良いことだとは思えませんでした。

どうやったらやめずに済むのだろう…と色々検討して、今まで全員で集まって30分やっていた練習を、少人数のグループに分散をして、時間も10分ずつなど短くして、朝昼夕など回数を分散させることに。

和太鼓も、ウッドデッキや外に出すなど換気にも配慮して、感染対策をしながらでもできる方法を探っていきました。
さらに、和太鼓の種類や台数を増やしたり、面(※バチで打つ皮の部分)を張り替えたりして音の違いを出すなど、制限がある中でも新鮮さを感じてもらえるような工夫もしました。

また、歌に関しても、みんなで大きな声を出すことは感染対策上良くないとされてしまったのですが、やはり「声」をしっかり出す機会は大事です。

そのため、ピアノを外に出すなど、外で歌を歌えるようにしました。
(宝珠保育園の周りは自然がいっぱいなので、園児の声が近隣住民の方の負担になることがないのは幸いだったと思います)

宝珠保育園太鼓の練習

さらには、畑の面積も倍まで拡大し、これまで以上に色々な野菜が育てられるようにするなど、自然と触れ合う保育の機会を増やすことにも力を入れました。

宝珠保育園畑の活動

残念ながら遠足などは中止にしましたが、私たちが一番大切にしたのは、「成長に関わる、毎日持続的に行う教育は止めない」こと。

全てを諦めるのではなく、このような状況下で子どもたちのためにできることは何かを考え、感染対策も含めた優先度をつけながら、検討・実行を重ねました。

広くなった畑も、種類の増えた和太鼓も、子どもの体験の幅を広げる要素の1つです。
こんなネガティブな状況であっても、絶えず何かできる方法を考えることで、ポジティブな効果を生むことも可能だと思います。

オンラインで挑戦した、子どものための新しい学びの機会

コロナウイルスがまん延する中で、危機感を感じていたのは「保育」に関してだけではありません。
小学校、中学校も含む、全ての教育が根こそぎダメになってしまうのではないかという恐れも感じていました。

学校は休校、自粛が求められ、外出もままならない中で、家の中でゲームばかり…などでは、ますます自律心を失ってしまう心配があります。

そこで、同じような心配や危機感を持った大人たちが集まり「子どもこれから会議」という有志団体を作ったのです。「こんなときだからこそ、子どもたちのためにできることを考えよう!」と、オンラインで子どもたちが社会性を学ぶための企画を立ち上げました。

具体的には、SNSで募集した小学生をグループ分けして、グループごとに仮想のお店の経営者になってもらいます。グループのメンバー同士で、何をどうやって売るのか、必要な費用はどこから、どうやって調達するのかを考えるのです。そして、仮想の銀行に対して、融資を受けるために働きかけるという店舗経営を体験してもらうものでした。
これは対面ではなく、Zoomを使ったオンライン上で行ったのです。

ただ、この経営体験の最後は、リアルで対面して行う計画だったのですが、そのタイミングで日光市でもコロナが増えてきてしまい、断念せざるを得ませんでした。

残念ながら最後までできませんでしたが、小学校3年生~6年生までの様々な小学生が集まってくれ、オンラインという新しい環境で学びに参加してくれるのは、とても嬉しいことでした。また「オンライン」に順応する子どもたちにも感心しました。

何より、こういう状況だからこそチャレンジできた新しい取り組みだったので、私たち大人にも学びがあり、おもしろい経験になったと前向きにとらえています。

オンライン活用から見えた「世界とつながるチャンス」

コロナ禍においては、オンラインの活用へ注目が集まりました。
オンラインなら、遠くにいる人たちと繋がれることを体感する機会にもなりました。
それは日本国内に限らず、世界も同じです。
これからは、もっと世界とつながるチャンスが大きくなります。

そのような環境で、子どもたちの未来をサポートするために、宝珠保育園では英語の授業をスタートさせました。通常の保育料の範囲で、全員が受けられる授業です。

世界とつながるチャンスを活かすためには、英語は必要不可欠。
2020年度からか小学校で英語の授業が必修化されたものの、まだまだ苦手意識を持ってしまう子が多いのも現実です。

だからこそ、保育園から英語の楽しさを感じてもらえる機会を作りたいと思いました。

講師には、ECCジュニアの先生にご協力をいただいています。
英語の授業をやりたいと先生を探す中で、私が惚れ込んだ「子どもも、先生自身も楽しそうに授業」をする方です。

私が一番重要視したのは「英語を“クラスのみんな”でやること」でした。
個人から授業料をいただいて、やる子とやらない子が出てしまうような選択性にはしたくなかったのです。

実は、そこにこだわったことで、実現までの交渉や調整に時間はかかりました。

しかし、子どもたちにとって、「みんなでやる」というのは、とても楽しいものです。
英語の時間も「みんなでやるから楽しい」と感じることで、英語に対してポジティブな向き合い方ができると思ったのです。

何度も話し合いを重ね、ECCジュニアさんのご理解・ご協力もあり、今年の4月からは念願の英語の授業をスタートさせることができました。
保護者の皆さんに喜んでいただけたのはもちろんのこと、子どもたちは、どんどん英語の挨拶や単語も覚えて、実際に使っていくのです。
英語をはじめて1ヶ月で、空を見上げて「It’s cloudy(曇っている)」と言っています。「子どもの吸収力ってすごい!」と感動の連続でした。

「もっと良くする」を考え続けることは、私たちの保育価値

コロナウイルスの流行がはじまって2年以上。最初こそ混乱はありましたが、今の宝珠保育園はコロナ禍の保育体制を確立することができています。

私たちはコロナウイルスの流行前から「子どもたちのためには、何ができるのか」を常に考え続けてきたという自負があります。どんな小さなことでも「もっと良くする方法」を考え、実行することを推奨してきました。
だからこそ、未知のウイルスに恐怖を感じる中でも、恐怖で足を止めるのではなく、その中で子どもたちのためには何ができるかを考え、実行ができたのだと思っています。

この2年の間にも、「こうしなくちゃいけない」「これが正しい」と思っていたことを、考え直さねばならない機会が多くありました。その中で、視野が広くなったのも感じます。

正直、コロナウイルスがいつ収束するのかは分かりません。これから先も付き合っていく必要があるかもしれません。

コロナだけではありません。これから先、また何が起こるか分からないのが世の中です。

今は「VUCA(ブーカ)時代」なんて言われていますが、いつの時代だって世の中はどんどん変わっていきましたし、予想もし得ない危機的なことも起こりました。いつの時代だって「VUCA時代」だったはずです。

※VUCA(ブーカ)とは…、世界規模で世の中が目まぐるしく変化し、将来を予測するのが困難な状態を表す言葉です。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取っています。元は1990年代に使われた軍事用語で、2010年代から「変化が激しく不確実な社会情勢」を指すビジネス用語として使われ出しました。

幼児期は、子どもが劇的に成長する時期です。

だからこそ、これから先どんなことが起こったとしても、子どもたちのためにできることを考え続けたい。
この2年間の経験を無駄にしないように、進化を止めないようにしていきたいと思っています。

それが宝珠保育園の保育価値になると考えているからです。

宝珠保育園外で給食を食べる子どもたち

子どもたちの安全を第一に、成長と学びの機会を作っていきます

保護者の皆さまも、コロナウイルスに関する様々な情報に不安を感じることも多いかと思います。
ですが、あまり情報には振り回されないように、1つひとつを冷静に考えていただくのが、そばにいるお子様のためにもなると考えております。ご不安があればいつでも保育園にご相談ください。

宝珠保育園でも外での授業を増やし、もし陽性者が出た場合も、園全体への感染拡大を防ぐように各クラスのおもちゃを共有にしないなど、様々な感染対策を実施しています。(コロナ禍で、保育園全体のおもちゃの数はかなり増やしました)
それもあり、当園でのクラスターは一度も発生していません。

さらに、これからの季節は熱中症対策も考慮して、お子様の安全を第一に成長を支えていきます。

状況はどんどん変化しますが、先生たち全員で、子どもたちのためにより良い方法を検討していきますので、安心してお預けいただければと思います。

最後になりますが、新型コロナウイルス感染症に罹患された皆さま並びにご家族の皆さまにお見舞い申し上げるとともに、医療関係者を始め、感染症拡大防止にご尽力されている皆さまに、深く感謝申し上げます。

宝珠保育園の畑