宝珠のおたより

子どもたちへ -大人になるまでに、大切にして欲しいこと-

こんにちは、宝珠保育園の園長の倉松です。
『宝珠のおたより」をいつもご覧になってくださる方、「見たよ」と声をかけてくださる方々、いつもありがとうございます。

現在この『宝珠のおたより』を通じて、私や宝珠保育園としての保育に対する考え方や取り組みをご紹介させていただいていますが、実は最近、外部の方に向けてお話をさせていただく機会も増えています。
小学生や中学生、または社会人に向けて、教育に関することをお話しています。

ここをご覧の方は、保育園に通う幼児だけでなく、小・中学校に通う子どもを持つ保護者の方もいらっしゃると思いますので、今回は、成長過程にある子どもたちに向けて、どんな話をしているのかを紹介したいと思います。

10年後には20歳を迎える “ハーフ成人式”の子どもたちへ

近年は、子どもが10歳になったら「ハーフ成人式」という名目で、お祝いや行事を行う家庭や学校が増えてきました。そのような機会に小学校へ呼んでいただき、小学5年生の子どもたちへ講演をさせていただくことがあります。

そんなときのテーマは、「大人になるまでに、大切にして欲しいこと」にしています。

あと10年たてば、本当の成人式がやってきます。でも、10歳の子どもたちは、まだまだ成長の途中。だからこそ、これからの10年の間に、大切にしてほしいことをお伝えしています。

最初に、子どもたちにはいくつかのグラフを見せます。 日本と世界各国の若者を対象にしたアンケートの比較表です。

(出典:「特集 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~」平成26年度内閣府子ども・若者白書(概要版)

【自分自身に満足している】という質問に対して、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」という4つの中から回答を選んでもらうアンケートです。

グラフを見ていただくと分かるように、日本は、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答したのは全体の45.8%です。それに対して、お隣の韓国は71.5%、アメリカに至っては86%です。ヨーロッパ諸国を平均で見ても、80%は越えています。

日本だけが、50%を切っているのです。

また【自分には長所がある】という質問に対して、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答したのは、日本では68.9%。しかし、韓国は75%、アメリカは93.1%、ヨーロッパ諸国の平均は約87%。ここでも日本が低い数値を出しています。

これらのデータから見えてくるものは何でしょうか?
諸外国の若者と比べて、日本の若者には長所がないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。

このデータは、若者たちが「自分自身に満足していない」「自分には長所がないと思っている」といった、自分に対する自信のなさ、つまりは自己肯定感の低さを表しています。

実際子どもたちに話をする時は、【うまくいくかわからないことに対し意欲的に取り組む】【つまらない、やる気が出ないと感じたことがある】【自分には社会現象が変えられるかもしれない】【将来への希望があるか】などの回答データについても発表します。
しかし、そのどれもが、日本が他の外国を比べても低い数値(【つまらない、やる気が出ないと感じたことがある】に関しては、高い数値)を出してしまっているのです。

このデータから言えることは、日本の若者は自己肯定感が低く、物事へのモチベーションが低い傾向にあるということです。(あくまで数値から見る傾向なので、もちろんそうでない若者もいるとは思います)

冒頭からこんな話をするので、多くの子どもたちがポカンとした表情になります。 それもそのはず、こんな事実を今までに聞くこともなかったでしょうし、こんなネガティブな話をわざわざする先生もいないでしょう。

でも、自己肯定感もモチベーションも低い状態で、大人になった時、辛い思いをするのは誰でしょうか? それは子どもたち自身です。

この『宝珠のおたより』でも何度か触れていますが、今の子どもたちにとって、未来の社会は決して楽なものにはなりません。人口は減り、社会が変化していくスピードも幅も、どんどん速く大きくなる中で生き抜くためには、自分で考えて、行動できることが必要になってきます。

自分で考える・動くという経験がなく、大人になってしまって、急にそれができるかと言われたら、なかなか難しいのが現実です。

*ぜひこちらもご覧ください*
宝珠のおたより「子どもが“考える力”を身につけるために必要なこと」

10~20歳までの間に、「夢中になれるもの」を見つける

保育園に通う幼児期は、人間を形成する時期です。
そして、10~20歳にかけての期間は「社会に出たときの学びの土台を作る時期」だと考えています。

講演の中で私は、この土台形成の期間に「なるべく多くの体験や挑戦、失敗をして、自分の中で夢中になれるものを『必ず』見つけて欲しい」と話しています。

これは本当に大切なことです。

実際、大人になって社会で成功している人は、10~20歳の間に夢中になれるものを見つけている人たちばかりだからです。

だからこそ宝珠保育園でも、和太鼓や自然と触れ合う機会、今年度からは英会話の授業もスタートさせ、様々な体験を通じて、子どもたちが好きなもの、夢中になれるものを見つけることに力を入れているのです。

「こんな人は大人になったとき、100%孤立してしまうよ」

「夢中になれるものを見つけて欲しい」という“やって欲しいこと”に対して、「やって欲しくない」ことの話もします。
こんなことをする人は将来、100%孤立してしまう、人生を失敗してしまうという人がいるからです。

「こんな人は、人生で失敗します」

①人をいじめる

人をいじめるような人は、大人になったとき、必ず失敗しています。いじめだけでなく、人を小馬鹿にする、あざ笑うなど、人にされて嫌なことを、周りの人を巻き込んでするような人です。 それを止めるのが嫌だからって、黙って見ていたり、加わったりする人も同じことです。

そういう「いじめ」をする人たちは、かわいそうな人たちです。
将来成功なんてしません。失敗する人たちです。
「かわいそうな人」だと思って、哀れな目で見てください。

いじめは我慢する必要はありません。先生や保護者、周りの人に言ってください。

この話をすると、生徒の後ろで聞いている先生たちは、大きくうなずきます。 ちょっと下を向いてしまう子どももいます。

②何でも人のせいにする人

学校生活の中で、できないこと・うまくいかないことに直面したときに、先生が悪い、親が悪い、周りが悪いと、いつまでも人のせいにばかりしている人も、大人になったとき100%失敗します。

私から見ても、近年の学校の先生たちは、子どもたちの教育のために、ものすごく用意・準備を重ねているのは間違いありません。それなのに、できないことを学校や先生のせいにするのは間違っています。子どもの頃から人のせいにばかりして、大人になっても誰かのせいにし続けても、何も解決しないからです。

この「失敗する人」の話になると、多くの子どもたちが興味・関心を示してくれるのを感じます。誰だって、「失敗する人生を歩んでもいい」なんて思いませんよね。

私は、子どもたちに辛く苦しい人生を送って欲しくはありません。失敗した人生を送って欲しいとも思っていません。だって、今の子どもたちこそが、将来この地域を支える主役になる人たちだからです。

どういう人生を歩むかは、その人自身の選択によって決まります。 今はレールの上にいるかもしれませんが、レールなんていつ外れたっていい、社会に出たときにどういう人になりたいかを考えて欲しいということを伝えています。

成功するためには「何でも素直に聞くな、疑え!」

講演会の様子

学校で話をすると、時折、一部の先生からあまりいい顔をされない話があります。
それは、成功する人になるには、「何でも素直に聞くな、言われたことを疑え」という話です。

「ちゃんと、先生の言う事を聞きなさい」と指導をしている学校としては、確かに言って欲しくない言葉だとも思います。

しかし、ただ闇雲に反発しろという話ではないのです。

与えられた情報や、指示されたことを、何も考えずに鵜呑みにするのではなく「それってなぜなのか?」という疑問を持って欲しいということです。

かのエジソンも、教師が粘土を使って「1+1=2」の説明をした際、“粘土を2つ合わせたら、1つの粘土の塊になるではないか”という趣旨の疑問を呈し、問題児扱いを受けたというエピソードもあります。
海外で育った人も「why(なぜ)」が多い傾向を感じます。

「素直に聞くな」は「反発しろ」ではありません。
ちゃんと、子どもの頃から、自分の頭で考えることを大切にして欲しいのです。

学校の先生方も、多くはこの背景を理解はしてくださいます。
ただ、制度や法令、方針の中でやりきれないことも多く、もどかしく感じている方も多いようです。

いつもこの話の流れの中で紹介している他校の事例に、「横浜創英中学・高等学校」という学校があります。
ここには数学の授業はないそうです。

もちろん数学を学ばない、という訳ではありません。
『先生が行う授業を生徒が聞くという一般的なスタイル』ではなく、自分で問題に取り組んでみて、分からないことは、自分で質問をしに行くという形式を取っているそうです。
質問する先生も特定の先生ではなく、生徒自身が分かり易いと思う先生の元に聞きに行くのです。

この学校の校長は、工藤勇一校長といい、私も大変尊敬する方です。
最上位の目標を掲げ、それを達成するための手段は何を選んでも良いという考えをされています。
こういった型にはまらない授業の形式も、この「最上位目標」を達成するための手段なのだと思います。

横浜創英中学・高等学校の、建学の精神は「考えて行動のできる人」の育成です。
今までの当たり前に固執することのない工藤先生のような考え方や教育は、素晴らしいと思いますし、深く共感しています。

卒園生から言われた「あの頃言われたことを思い出す」

今までの話は、小学5年生向けのハーフ成人式だけでなく、中学校でも話をすることもあります。
先生たちからは、「自分たちが伝えられないことを伝えてくれて、ありがとうございます」という言葉をいただくこともあり、大変ありがたい気持ちです。

また、宝珠保育園の卒園生が通う学校で講演をさせていただくこともあり、話を聞いた卒園生からは「あの頃言われたことを思い出しました」なんて言ってもらえることも。
保育園の園児にも「好きなことを見つけよう」と伝えていたことを覚えていてくれて、それもうれしいことです。

色々とネガティブな話もしてはいますが、多くの子どもたちが、夢中になれることを見つけ、明るい人生を歩んでくれること、それが一番の願いです。

もう“大人になった”人たちへ。これからの「生き方」とは

後継者倫理塾講演会の様子

最近はありがたいことに、社会人向けの場でも講演をさせていただくことが増えています。
そういう場では、教育という観点より、これからの時代の「生き方」についてお話をすることが多いです。

小学生に向けても「人が嫌がることをしない」と話していると書きましたが、これは大人になっても同じです。
人は1人では生きられません。
どんなことをするにも、人との関係性を築くことが必要になります。

例えば「1人で開発ができるIT関係の仕事だってある」と思っても、やはりそこにはお客様や関係する人が必ずいるものです。
だからこそ「相手の気持ちを考えて生きていく」ことは必要です。相手の気持ちを考えずに行動してしまう人は、信用・信頼を失ってしまいます。

将来的な人口減少や社会の厳しい逆風の中で生き残っていかねばならないのは、子どもだけではありません。私たち大人だって、まだまだ生きていかねばなりません。

厳しい社会の中で、生き残れる人・企業であり続けるためには、多くの人から信頼され、選ばれる存在になることが必要です。

だからこそ、人の気持ちを考えることができる「人間の質」が問われると思うのです。

その上で「この人(会社)に任せれば間違いない」と思ってもらうには、「知識と見識」を持ち、「自分自身で行動を起こし成功の実績があるか」も必要不可欠です。

人を想うことや高い志などは、とても大切です。
ですがこれからの時代、それだけでは人を幸せにはできない。絶えず学び、情報を得続け、行動を起こし、実績を積み上げていくことが必要になってきます。

私自身も、日々勉強の毎日です。
しかし、自分が学んだことや考えたことが、自分のためだけではなく、人のためになったらいいと思っています。それが仏教の「利他の心」だからです。

まずは、身近にいる宝珠保育園の園児たちや職員、地域の子どもたち、そして多くの大人たちへ。
少しでも、何か役立つことができたら幸いです。

保育や教育など、お困りのことがあれば、ぜひ宝珠保育園へお声がけください。

健康経営推進に関する協定での講演会